都心のイチョウは立派な会社員。地方の広大な土地に植樹されたら生きていけるの?

神宮のイチョウ並木、素晴らしい景観ですよね。特に黄金色に紅葉した時はため息が出るほどです。夫は神宮のイチョウ並木付近で育ったので、毎年紅葉の時期には家族で訪れています。

毎年見事に紅葉した並木は、青山側からみると奥に洋風の絵画館が鎮座し、それはとても絵になります。そもそもこのイチョウ、驚くことに樹齢100年以上です。その他有名都心のイチョウ並木、丸の内行幸通り、東京大学安田講堂通り、国会議事堂通り、日比谷公園遊歩道も樹齢100数十年ということですから驚きです。空襲にも耐えてきたのですね。

ただ、ワタシはこの風景、絵にはなると思いますが好みで言ったらあまり好きではありません。それは、イチョウの木がクリスマスツリーのようにカットされ、全てが緻密に計算されて作り出されたツクリモノに見えるからです。

樹齢100年以上のイチョウの木は、地方に行くとよく見られます。その木は左右にのびのびと枝を張り巡らせ、一本でも見事に存在感を出しています。実を付ける季節になると、銀杏特有の匂いが立ち込めたり、幹にはチチと呼ばれるなにか垂れ下がったような鍾乳洞のようなものがついてグロテスクだったり、よく見ると葉っぱは左右非対称なものも混じっていて個性的です。

でも、都心のイチョウ並木にあるイチョウは、みんなが同じクリスマスツリーのような形をしていて、葉っぱも美しく絵に描いたようにきれいなイチョウ型。銀杏があまり落ちていないし、汚臭もない。レースクイーンのように(古いですね)整然と美しく並んでいる気がします。

これを保つには、様々な業者が関わっているのでしょう。町づくりの一環として企画する役人。汚臭をさせないために、雄のイチョウのクローンを開発する研究者。クローンを実際に作る製作者。幹を運ぶ運送会社、4年に一度選定する庭師。落ち葉や銀杏を始末する清掃会社。様々な役割の人達がこの一糸乱れず整ったイチョウ並木を作り出すのですね。

多くの業者に仕事を与え、観光地として人を誘致し、東京のイメージを上げる役割を果たしているイチョウは立派なサラリーマンですね。黙っていても大きな病気もなく、健康管理をされたまま生存し続けるでしょう。不運にも病気になってしまえば、すぐにリプレイスされる。老木になれば、退職、伐採が待っています。そんなイチョウ並木に少し違和感を感じるのは私だけでしょうか。哀愁が漂っている気がして、つい頑張ってるねって声をかけたくなります。

ワタシは神社の横で好き放題手足を伸ばすイチョウを見ている方がホッとします。自分の生き方に合っているからでしょうか。どちらの生き方がいいのか、それはその人の価値観により答えは異なります。幸いイチョウと違って人間なので、選ぶ権利があります。今、神社の横のイチョウになろうと思っていますが、しばらくイチョウ並木で手入れしてもらっていたイチョウは神社の横ですくすくと育つことができるのかしら。

【余談】

先日夫の言葉にすごくびっくりしました。夫と紅葉したイチョウ並木を歩いていた時のことです。「ここのイチョウはかわいそうだよね、ツリーのようにカットされていて、もっと自由に手足を伸ばすように枝葉が伸びている木のほうが好きだな」というワタシの言葉に夫が驚き、イチョウの木は元来こういう形だと思っていたというのです。

絶句。

なるほど、よく子供たちはホッケやアジは開いた状態で海の中で泳いでいると思い込んでいるという笑い話があります。それと同じで、都心のイチョウ並木はツリーのようにカットされているため、それが本来の形だと思い込んでいる人がいるかもしれません。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。